3DS発売の頃に前回の記事を書いて、すっかり放置されていたこのシリーズの記事を久しぶりに書こうと思ったのは、なんといってもNintendo Switchの発売日が迫っているからである。これまで、ですます調で記述していたが、この類の論評記事はだである調の方が書きやすいので、この書き方で推進したい。今回、任天堂は据え置き型と称して事実上の携帯ゲーム機を発売した。任天堂の携帯ハードにしてはかなり高価なこと（2万円を越える任天堂の携帯ゲーム機はロケットスタートする形では到底売れないことを3DSで学習したかもしれない）、WiiUの失敗を踏まえ、WiiUを終息させ3DSと併存させるということでこのような言い方になっているのであろう。実態としては携帯ゲーム機そのもので、もし任天堂がゲームボーイシリーズを継続していたら、あと5年後くらいにお手頃価格で発売されていそうなシロモノである。Vitaの後継機は出る気配がないから、むしろVitaの後釜かもしれない。価格帯もおおよそそれくらいといった感じもする。
さて、このNintendo Switchは任天堂のハードとしてはかなり異質である。すでに述べた通り、事実上の携帯機として、任天堂のハードとしてはかなり高価であるし、解像度も3DSと比較してかなり向上しているし、なんならVitaをも凌ぐ物となっている。かつての任天堂であれば、もっと何年も先にならないと発売されなかっただろう。それに、GPUはこれまでN64の時代からずっとAMD（とその前身）だったにも関わらず、ここにきてnVidiaを採用したということ。たしかにAMDは携帯機に向くチップは持っていないから仕方がないが、少し意外に思う。性能も事実上の携帯機であるにも関わらずWiiUを越えている。
こうなると、WiiUはどれほど低スペックだったのか、と思ってしまうが、たしかにWiiUは低スペックであり、それゆえ、かなりの短命ハードとなってしまった。WiiUと同世代とされる据え置きゲーム機はPS4とXboxOneがある。先代のWiiのときにはPS3とXbox360だった。Wiiと他の二機種は圧倒的に性能の差があり、Wiiも前半はよく売れたが、後半になると失速してしまった。WiiUではこの過ちを繰り返さないで欲しいと思っていたのだが、やっぱりWiiと同じ結末となった。というよりも最初の爆発力もなかったので、惨憺たる結果になったが……。これら二機種で何がまずかったかといえば、間違いなく、世代の差があったということであろう。WiiのときはWiiだけ固定機能シェーダ（DirectX7か、せいぜい8くらいと言われる）、他の二機種は概ねDirectX9だった。これにより他ハードのソフトが移植できず、ソフト売上を減らしてしまった。WiiUのときも、すでにパソコンではDirectX11が普及していたにも関わらず、まさかのDirectX10レベルだった。一方、PS4やXboxOneがDirectX11以上になることは確実であったので、また世代の差が生まれ移植性がなくなってしまう。これによりマルチタイトルからハブられ、結果としてタイトル数が少なくなり、ハードの購入者が少なくなることは自明の理だった。任天堂から発売されるタイトルに爆発力がなければ売れないハードというのは、今時かなり厳しい。
閑話休題、Nintendo Switchであるが、GPUはDirectX11相当のもののようだ。PS4やXboxOne向けのタイトルも移植がしやすいので、この点は期待ができるだろう。一方、間違いなく劣化版となるので、この点は少し心配ではある。結論として、Nintendo Switchの命運であるが、これは結局序盤の任天堂タイトルの爆発力にかかっている。なぜなら普及台数0のハードであって、マルチタイトルはことごとく劣化版であるから、そのタイトルをプレイするためにこのハードを買う物好きはなかなかいない（ひょっとすると、携帯版として認識され売れるかもしれないが）。となると、任天堂のソフトでいかにハードが売れるか、となる。ある程度普及すればマルチタイトルはハード所持者の次のソフトとして十分選択肢にあがる。しかし、そもそも序盤でハードが売れなければ、いかに移植が容易とはいえソフトがそもそもリリースされなくなってしまう。よって、序盤の任天堂タイトルがどれほど売れるか、であるが、相変わらずスカスカの発売日程のようなので、成功はかなり怪しいのではないだろうか。
国内では据置と同じタイトルが発売される携帯ゲーム機としてVita等の後釜需要があり、そこそこ成功するかもしれないが、世界に目を向けると携帯機は売れないので、やっぱりNintendo Switchも大して売れないだろう。もう一つ付け加えるならば、ゲーム機にパーティ需要などもはや無いので、そろそろ任天堂もWiiの幻影から目をさますべきでは無いかと思う。