サマルカンド-文化交差路

サマルカンドを代表する景観として知られる。レギスタンとはペルシャ語で砂地という意味である。チンギス・ハーンに破壊される前のサマルカンドの町はこのれ儀スタン広場より北のアフラシャブの丘に広がっており、この地は文字通り砂地であった。ティムールによって新市街地として開発が進められたこの場所に、ティムール朝4代君主ウルグ・ベクにより最初のマドラサ（イスラーム神学校）であるウルグ・ベク・マドラサが建設された。現在では広場を取り囲むように3つのマドラサが建っている。

レギスタン広場の正面、北側に建つティリャカリ・マドラサ。レギスタン広場を取り囲む3つのマドラサの中で最も新しく、1660年に建造された。マドラサではあるが、当時中央アジア最大と言われたビビハニム・モスクが破壊されていたため、サマルカンドのメインモスクとしても使われた。

ティリャカリとは黄金を施されたという意味。その名の通り黄金に輝く絢爛豪華な礼拝堂をもつ。礼拝堂の天井は、ドーム天井にみえるが実は平面で、精巧な遠近法が用いられている。

レギスタン広場の西側にたつウルグ・ベク・マドラサはレギスタン広場を取り囲むマドラサの中で最も古く、君主でもあり天文学者でもあったウルグ・ベクによって1420年に建造された。ウルグ・ベク自身もここで講義を行った。

ウルグ・ベク・マドラサの中庭。マドラサの内部にはいずれもこのような中庭があり、フジュラと呼ばれた学生寮や教室が並んでいる。現在、1階のフジュラの多くは土産物店として使用されている。

ウルグ・ベク・マドラサの正面に対を成すようにして建つこのマドラサは1636年に建造された。シルドルとはタジク語でライオンを意味し、正面アーチにはライオンと称すトラのような動物とそれに追われる鹿が描かれている。ライオンは王の権力を示すものであるとか、別の説では鹿は学問を、ライオンはそれを追求する学生を、それを照らす人間の顔を持つ太陽はそうしたものを統治する王を表すとされれている。ただし、偶像崇拝を禁じるイスラム教でこの装飾を採用した建築家は非難をあび自殺したと言われる。

ティムール帝国初代の君主であるアミール・ティムールが眠る霊廟。もとは、ティムールが孫のムハンマド・スルタン・ミルザのために建てた廟であるが、ティムール自身もミン遠征の途上で病没しここに埋葬されている。ティムールは生地シャフリサーブスに自らの棺を用意していたが、棺が雪に埋もれていたためこの廟の棺に納骨された。

黄金の霊廟にはティムールと孫ムハンマド・スルタンのほか、ティムールの師ミルサイード・ベリケ、ティムールの他の孫であるウルグ・ベク、息子シャー・ルフとミランシャー、またひ孫3人が眠っている。霊廟には墓標が安置されているが、これは墓の位置を示すだけのもので、実際の墓は地下3メートルの墓室にある。ティムールの墓には言い伝えがあり、棺を開けると災いが起きるとされている。この国がソ連であった時代に一度開けられ伝承通りティムールの右手右足の負傷を確認したが、翌日ソ連はドイツに侵攻されたため、棺は鉛で固められ封印されそれ以降現在に至るまで開けられていない。

イスラーム神秘主義者シェイヒ・ブルハヌッディン・サガルジを祀る。ルハバットとは「霊の住処」という意味がある。預言者ムハンマドの遺髪を治めた箱も一緒に葬られたとされている。

この地にイスラム教を伝えたクサム・イブン・アッバースを祀る廟のほか20近い聖者廟など数多くの廟が立ち並んでいる。シャーヒ・ズィンダとは「生ける王」を意味している。

シャーヒ・ズィンダ廟群の最奥部にあるこの霊廟がサマルカンドで現存最古の建造物。

ティムールの后ビビハニムのために1404年に完成したイスラーム世界最大と言われるモスク。帝国中から熟練の職人200人、500人以上の労働者、さらにインドから運ばれた95頭の象が使われわずか5年で完成した。ただし、これほどの巨大建造物を完成させるにはあまりにも工事を急がせすぎたために崩落事故が相次ぎ、後に廃墟となった。現在の姿は1974年からの修復によるもの。

ビビハニム・モスクの向かいに建つ廟。ビビハニムと母親、姉妹が祀られている。

もともとゾロアスター教の寺院があった場所に建つモスク。チンギスハーンによって破壊され、その後数回の建て替えの跡、現在の姿となったのは19世紀。

ウルグ・ベクによって作られた天文台の跡。ここでの構成観測を基にウルグ・ベクは1年を365日6時間10分8秒と推測した。実際には365日6時間9分6秒であり、極めて誤差が少ないことがわかる。

もとはこの地にゾグド人と呼ばれる人々が暮らしていたのがサマルカンドの始まり。今もこの丘には1220年以前のサマルカンドの町が破壊されたまま埋もれている。

チンギス・ハーンによって破壊される前のサマルカンドを忍ばせる貴重な品々を今に伝える博物館。

8世紀頃にゾグド人が造ったバザールが発症とされ、サマルカンド最大のバザール。かつてはこの一体に隊商宿が軒を連ねていた。

左側がサマルカンドブロフ。ブロフはウズベキスタンを代表する料理で、ピラフの原型と呼ばれる。ウズベキスタンでは地方ごとに多少の特色がある。サマルカンドブロフは、高温の油で素揚げにされた牛肉、黄色い人参などが盛り付けられている。肉は牛肉であることが多いが、馬肉など他の肉が使われることもある。

サマルカンドブルーは酸化コバルトに石英パウダー等を加え滑らかになるまですりつぶし、絵付けをしたあと窯で1100度まで上げてこの温度を維持し、そこから徐々に温度を下げて焼き上げるとサマルカンドブルーと呼ばれる青が生まれる。コバルトはイランから、絵付けの技術は中国から伝わった。サマルカンドブルーそのものはサマルカンドが文化の交差路であったことの象徴でもある。