概要
北京と瀋陽の明・清朝の皇宮群ははじめ北京の故宮が世界遺産に登録された。2004年、清朝誕生の舞台となった瀋陽の故宮が世界遺産として拡大登録された。故宮とは昔の宮殿を意味している。北京の故宮は500年24人の皇帝の暮らした王宮であり、世界最大の宮殿であある。またヴェルサイユ宮殿とならび宮殿建築の最高峰といわれる。一方、瀋陽の故宮は北京のそれと比べ小規模ながら、満州族の伝統文化を色濃く残している。二つの故宮には、皇帝の色である黄色、中国皇帝は龍の生まれ変わりと信じられていた5つの爪を持った龍がそこかしこに用いられている。なお、4つ以下の爪を持つ龍は、琉球など、中国の冊封体制の下にあった王朝で用いられている。基本情報
遺産種別/登録基準
文化遺産/(i),(ii),(iii),(iv)
登録遺産位置
中華人民共和国北京市、瀋陽市
北緯22度17分 東経112度33分
北緯22度17分 東経112度33分
登録遺産面積
資産 12.96ha
緩衝地域 153.1ha
緩衝地域 153.1ha
登録年月
1987年、2004年
登録基準の具体的内容
(i)
二つの故宮は中国の宮廷建築の発展における傑作である。
(ii)
宮殿の建築様式は、特に瀋陽において、伝統的建築の影響と特に17,8世紀の中国宮廷建築の重要な交流を示しているものである。
(iii)
二つの故宮は明朝と清朝の中国文明を色濃く示すものである。それは数世紀間にわたる満州族の伝統的生活とシャーマニズムの風習が執り行われてきたことの特筆すべき証拠というだけでなく、風景、建築、家具、芸術の宝庫である。
(iv)
二つの故宮は、中国において偉大なる宮殿建築の融合の顕著な例である。それらは17,8世紀の建築の進化の現代での証拠であって、満州族の伝統および清朝から黎明期の明朝ないしは元朝の壮大な慣例を示している。
ギャラリー
天安門広場
天安門は北京の故宮へつながる入口であり、現在は中華人民共和国の象徴的広場である天安門広場が広がる。
午門
高さ10メートルの城壁に立つ午門。この先が宮殿の敷地内となる。かつては、庶民は近づくことさえ禁じられていたが現在では博物館となっており一般に公開されている。
太和門
太和門には頑丈な扉が備え付けられている。扉の先には宮殿でもっとも重要な太和殿がある。
午門から太和門への橋
午門を抜けると、5つの橋がかかっている。この内中央は、かつて皇帝専用の橋であった。
太和殿と広場
式典では広場に家臣が並び、皇帝にひれ伏した。その他、謁見者はこの広場の中央で、三跪九叩の礼を行わなければならず、その上、大臣以上の官僚でなければ謁見することさえ許されなかった。
太和殿
太和殿には玉座が置かれる。故宮は1420年に完成したが、翌年焼失、現在の建物は1695年に改築されたもの。
中和殿と保和殿
手前の建物が中和殿で、奥に見えるのが保和殿。太和殿と併せて3つが三殿と呼ばれこのエリアが、皇帝が政を行う「外朝」であり、生活の場である内廷と区別された。
屋根瓦の走獣彫像
魔除けのため、龍や鳳凰、獅子などを引き連れた仙人の飾り瓦が故宮内の建物の屋根の先端に施されている。この、瑠璃瓦の黄色は、庶民が使うことの出来ない皇帝の色であった。
乾清門と銅獅子像
皇帝の生活の場であった内廷への門である乾清門の前には、1対の獅子像が並ぶ。獅子は聖獣とされた。
乾清宮
内廷は行為手とその家族のためのプライベートな空間であった。乾清宮（けんしんきゅう）はもともと皇帝の寝宮であったが、清代には日常政務の場となった。
交泰殿
交泰殿には歴代皇帝の御印や水時計などが置かれている。
瀋陽の故宮
1625年に造営が開始された瀋陽の故宮は北京の故宮の10分の1の大きさ。中央の建物は大政殿。遊牧民の住居パオに似せたといわれている。その柱には龍が絡みついているが、もともと草原の民だった清王朝に龍を崇める習慣はなかった。中国文化を取り入れることで清朝を中国の王朝として認めさせた。
崇政殿の玉座
第二代皇帝ホンタイジが政務を執り行った崇政殿。1636年、ここで国号を「清」と改めた。その8年後、明朝滅亡に乗じて清朝は都を北京に移した。
緑色の瑠璃瓦
瀋陽の故宮でも、黄色の瑠璃瓦が使われているが、北京のそれとは異なり、緑色の瑠璃瓦で縁取られている。この緑は、満州族のルーツである草原の色を表していると言われる。
屋根瓦の走獣彫像
色や見た目は違えど、北京の故宮と同じように魔除けのため、龍や鳳凰、獅子などを引き連れた仙人の飾り瓦が故宮内の建物の屋根の先端に施されている。
参考文献
TBS THE世界遺産 / TBS 世界遺産（～2008） / UNESCO公式ホームページ / 週刊世界遺産 故宮／万里の長城
Photographer: Three-stick-long