グレート・バリア・リーフ
Great Barrier Reef
概要
グレート・バリア・リーフは、オーストラリア北東部の沖に連なる珊瑚礁地帯である。その総延長は2000kmで世界最大の珊瑚礁である。ここには、1500種以上の魚、約30種の鯨やイルカ、さらに約400種の珊瑚が生育する。世界第二の珊瑚礁があるカリブ海の珊瑚の種類は約65であり、これほどの差は、グレート・バリア・リーフには藻などの海洋植物やプランクトンが豊富であることに起因する。海の間近まで迫る熱帯雨林に濾過され透明度の高い川の水はそのまま海に注がれ、海洋植物やプランクトンの成長を促進しているのである。この豊かな生態系を維持する珊瑚礁を構成しているのはわずか1cmにも満たないポリプ(珊瑚虫)である。彼の内部に褐虫藻という藻が生息しており、光合成を行い珊瑚の成長を促進し、また珊瑚の色も作り出している。水温が28度を越えると褐虫藻が珊瑚から逃げ出し、白化(コーラルブリーチング)が発生する。グレート・バリア・リーフでは1998年、2002年、また2016年から2017年にかけて、白化現象が報告されている。白化し死んでしまった珊瑚礁からは生命が姿を消してしまうが、2018年現在、グレート・バリア・リーフは危機遺産には登録されていない。本稿では、グレート・バリア・リーフに生息する幾つかの生物を紹介するため、当地以外で撮影した素材も使用し、適宜注釈を行う。
基本情報
遺産種別/登録基準
自然遺産/ (vii)(viii)(ix)(x)
登録遺産位置
オーストラリア連邦クイーンズランド州
南緯18度17分 東経147度41分
登録遺産面積
資産 34,870,000ha
登録年月
1981年
登録基準の具体的内容
(vii)
グレート・バリア・リーフは水面の上下を問わず最上級の自然美を有しており、それは地球上において壮観な景観を示している。オーストラリア北東の海岸に沿って連なる珊瑚礁が形成されており、それは宇宙から見ることができる生命構造の一つである。
(viii)
クイーンズランドの海岸に連なる2000kmのグレート・バリア・リーフは、千年を超える進化の過程で築かれた生態系の極めて顕著な例である。この地域は少なくとも4回の氷河期と間氷期のサイクルに晒され浸水し、過去15000年にわたり大陸棚で珊瑚礁が成長している。
(ix)
珊瑚礁や島の地質学的に極めて重要な多様性は、地形、海洋、環境の現在進行中の変化を反映しているものである。大陸棚の上に複雑に築かれた地形は、湧昇や幼生の飛散などの環境プロセスや海流に影響を与えている。
(x)
巨大で多様性に富んだグレート・バリア・リーフは、地球上でもっとも豊かで複雑な自然生態系の一つであり、生物多様性保全にとって最も重要なもののひとつである。その多くは世界的な保護の重要性がある数万種の動植物を支えている。
ギャラリー
グレート・バリア・リーフ
オーストラリア北東の沖に連なる大堡礁。その長さは2000km、面積は日本列島に匹敵する。
リーフ
リーフとは珊瑚礁のこと。グレート・バリア・リーフではリーフが2500以上も集まっている。
コアラリーフ
ケアンズ沖にあるグレート・バリア・リーフを構成するリーフの一つ。その形がコアラの顔に似ているため、そのような名前がついている。
海上の白波
外洋の波は海面すれすれまで発達した珊瑚礁に当たって白波となり、珊瑚礁の内側では波の少ない穏やかな海となる。
珊瑚でできた島
海水に運ばれた砂が珊瑚礁の上に堆積してできたもの。ところで、ブダイの仲間はサンゴの骨格を噛み砕き、年間1トンもの砂を排泄する。そうした砂がグレート・バリア・リーフで見られる白い砂である。ここに海鳥が定着し、糞が養分となり植物が生え、やがて立派な島へと変化していく。
グリーン島
ケアンズの宝石と呼ばれるグリーン島。海鳥が落とした糞が養分となりそこに植物の芽が生え土壌となり生き物が暮らす環境が整った。
珊瑚礁の海
珊瑚礁が運だ起伏に富む地形は様々な生活環境を与えた。魚だけでも1500種以上、サンゴの種類も400種を誇る。(海遊館)
アオウミガメ
グレート・バリア・リーフはアオウミガメの貴重な産卵地。産卵の時期には1万匹のウミガメがグレート・バリア・リーフに集結する。餌である海藻が食べやすい形状の口や、後ろ足より前足が長いことが特徴で、陸上種のように頭や足を甲羅の中に収納することはできない。
メガネモチノウオ
頭のコブ状の突起から、ナポレオンフィッシュの名で知られる。若い個体は目の後ろに黒いラインがある。通常は単独で珊瑚礁周辺に生息しているが、繁殖期になると多くの個体が一箇所に集まる。
カクレクマノミ
ディズニー映画で一躍有名となったカクレクマノミは、その影響により乱獲が問題となった。イソギンチャクの触手には猛毒があるが、クマノミは特殊な粘膜によりイソギンチャクの猛毒の影響を受けない。その為他の魚では攻撃される為近寄れないハタゴイソギンチャクなどと共生している。イソギンチャクは、クマノミから餌のおこぼれを入手している。(沖縄県北谷町付近)
ナンヨウハギ
カクレクマノミと同じくディズニー映画で有名となった熱帯魚。幼魚時は珊瑚の間に群れているが、成長するにつれて岩礁域に移動する。(美ら海水族館)
ツノダシ
黒と白のからだと長く伸びた背びれが特徴での熱帯魚。学名のZanclusには、鎌という意味があり、本種の特徴である背びれに由来する。(京都水族館)
マンタ
マンタの名前で知られるオニイトマキエイ(写真は、近年近縁の別種と判明したナンヨウマンタ)。比較的穏やかな性格でダイバーにも人気がある。腹の黒い斑紋で個体識別できるが、中には殆ど真っ黒の個体もいる。(海遊館)
カスリハタ
ジャイアント・ポテト・コッドとも呼ばれる大型の肉食魚。珊瑚礁に住む小魚は、カスリハタなどの捕食者から身を隠すとき珊瑚礁の奥に身を潜める。(海遊館)
ミノカサゴ
オコゼ科の一種。大きく長い胸ビレと背ビレを揺らして優雅にゆったりと泳ぐ。背ビレ、腹ビレ、尻ビレには毒があり危険。(名古屋港水族館)
ウツボ
グレート・バリア・リーフに生息するのは写真の近縁種のニセゴイシウツボ。約2mでウツボの中では最大種であるが、他の魚を捕食することはない。(須磨海浜水族園)
参考文献
週刊世界遺産 No.33 グレート・バリア・リーフ / TBS 世界遺産(2002) / TBS THE世界遺産(2008、2014) / UNESCO公式ホームページ / 海遊館ホームページ / 美ら海水族館ホームページ / ARC Centre of Excellence for Coral Reef Studies
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