概要
古都ホイアンは、南シナ海に突き出したインドシナ半島にある、アジアの伝統的な港湾都市である。16世紀から19世紀には、その地理的特性から東西貿易において海上交通の要衝として、オランダ、ポルトガル、スペインや、中国、日本など、様々な国のヒト、モノが集まり国際貿易都市として栄えた。日本では、江戸時代初期の朱印船貿易の交易先として朱印船が最も行き来していたのがホイアンであり、最大で1000人もの日本人が暮らす日本人町も形成された。来遠橋は日本橋の呼び名で有名だが、その他にも伊万里焼が数多く発掘され17世紀のホイアンで広く使われていたことが明らかになっているなど、ホイアンは日本との関係が深い。なお、日本ユネスコは本物件を「古都ホイアン」と訳しているが、ホイアンは古都であったことは無いため、正確には「ホイアンの古い町」あるいは「ホイアンの古い町並み」と訳すのが適切であろう。基本情報
遺産種別/登録基準
文化遺産/(ii),(v)
登録遺産位置
ベトナム社会主義共和国クアンナム・ダナン省
北緯15度52分 東経108度19分
北緯15度52分 東経108度19分
登録遺産面積
資産 30ha
緩衝地域 280ha
緩衝地域 280ha
登録年月
1999年
登録基準の具体的内容
(ii)
ホイアンは国際商業港として長い時間をかけた文化の融合の重要な兆候として顕著なものである。
(v)
ホイアンはアジアの伝統的な貿易港の非常によく保存された例である。
ギャラリー
トゥボン川
ドゥボン川を南シナ海から6km遡ったところにホイアンの町がある。南シナ海へ突き出した地理的な条件によって、ホイアン周辺は海上交通の要衝となった。水運が大量輸送に最も適した手段であった前近代において、ホイアンは川と海によって世界とつながっていた。
立ち並ぶ家々
ドゥボン川にそって900mに400棟の木造家屋が立ち並んでいる。ホイアンは近代の数多くの戦争、特に国土の大半、現在世界遺産に登録されているミーソン聖域やフエなども被害にあったベトナム戦争でも破壊されなかったので、ベトナムで唯一、前近代の伝統的な貿易港としての面影を残している。
朝市
ホイアンの市場は朝早くから活気に満ちている。
豊かな産物
ホイアンは海や山の豊かな産物にも恵まれている。このことが、ホイアンを海のシルクロードの重要な中継基地として栄える一因にもなった。
古い商家
ホイアンの伝統的な家は二階建ての木造建築。間口が狭く奥行きのあることが特徴で、入ってすぐの場所が応接間、ついで中庭、その奥に住まいがある。
日本橋
正式名を来遠橋と呼ぶこの橋は18世紀に改修された際に日本橋という通称がつけられた。かつてこの橋のたもとに300mほど続くと記された日本人町があり、多い時で1000人を超える日本人がこの地で暮らした。1633年に日本人の海外渡航が禁止されると、日本人町は衰退し、来遠橋が日本橋と呼ばれるようになった頃には日本人町としての性格を完全に喪失していた。もともとこの橋が日本の商人によって建てられたと伝えられており、それを後世に遺すために石碑が建てられ、またこの橋を日本橋と呼ぶようになったという。
洪水の記録
川に面したホイアンは、厳島神社やベネツィアなど他の水辺に位置する世界遺産と同様に大潮に悩まされてきた。また、雨季には毎年のように洪水が起こり、家によっては写真のようにその水位を記録している。ちなみに洪水の際は家財はすべて2階に上げられる。