ケルン大聖堂
Cologne Cathedral
概要
ケルン大聖堂は、その建設背景から統一国家としてのドイツ成立を記念する記念碑としての性格も併せ持つゴシックの大聖堂である。13世紀当時ドイツ最大の商業都市であったケルンの繁栄にふさわしい、世界一の大聖堂を目指して建設が始まった。しかし、そのあまりの巨大さに建設には莫大な資金が必要となり、ケルン自体の衰退の影響も受け、資金難のため16世紀に工事が中断。およそ300年の中断を経て19世紀、小国に分立していたドイツ国家統一の記念碑としてケルン大聖堂は建設を再開。ゲーテなどの文化人の呼びかけにより1880年に完成した。工事中断の影響により、結果的にはのちの時代の改変を受けず、中世の大聖堂そのままの姿を伝えている。建設当初世界一を目指したケルン大聖堂は、ステンドグラスの大きな窓と高い天井が特徴のゴシックの大聖堂としては現在でも世界最大級のものである。
基本情報
遺産種別/登録基準
文化遺産/(i),(ii),(iv)
登録遺産位置
ドイツ連邦共和国ノルトライン・ヴェストファーレン州
北緯50度56分 東経6度57分
登録遺産面積
緩衝地域 258ha
登録年月
1996年
登録基準の具体的内容
(i)
ケルン大聖堂は、人類の創造的な才能の、卓越した作品である。
(ii)
6世紀以上にわたって建設が続けられたケルン大聖堂は、大聖堂建築の頂点を示すと同時にその集大成である。
(iv)
ケルン大聖堂は、中世から近代に至るまでのヨーロッパにおけるキリスト教徒の信仰心の強さとその持続性を、強力に証明している。
ギャラリー
西正面
西正面の双塔の高さは157m。その高さは聖堂建築としてはウルム大聖堂の162mに次ぐ2位。ウルム大聖堂の完成は1890年のため、1880年から10年間は世界一高い聖堂建築であった。建築物として聖堂に制限しない場合にも1884年にワシントン記念塔(169m)が竣工するまで世界一の高さを誇った。2014年現在、北塔では修復作業が続けられている。大聖堂には複数の石が使われているが、修復にはそれぞれオリジナルと同じ産地から切り出した石を用いている。
ペテロとパウロの門
ペテロとパウロの門とよばれる大聖堂西正面右側の扉。左に聖ペテロ、右に聖パウロが立ち、扉口上部には6人の預言者と二人の生涯を描いた浮き彫りがある。
扉口中央上部
扉口中央上部には旧約聖書の一場面を描いた浮き彫りがある。アーチ部分は天使と太陽、月、地球を表す彫刻で装飾されている。
南正面
1855年に完成した南正面。ネオゴシック期の彫刻で、大聖堂外部の彫刻の中ではもっとも華麗と称される。
小塔
身廊と翼廊の交差部屋上に建てられた小塔。聖堂建築家ツヴィルナーによるもので、先端までの高さは109m。なお、身廊の先端は太陽の昇る真東を向いている。太陽はキリストの象徴でもある。
ケルン1の建物
大聖堂は2014年現在も周辺で最も高い建物。2004年、大聖堂周辺に複数の高層ビルの建設計画が持ち上がったことによりユネスコは危機遺産に指定。ケルン市は計画の縮小を決定し、更に大聖堂周辺の建物に、高さの制限を策定。2006年、大聖堂は危機遺産のリストから外された。
身廊
身廊の天井の高さは43mを超える。天井目指して伸びる束ね柱とステンドグラスから差し込む光はゴシック建築の真髄。
キリスト埋葬の像
キリスト埋葬の像。巨大な石灰岩の塊から掘り起こされたネオゴシック彫刻の傑作。
中央祭壇
中央祭壇。奥のステンドグラス、「古い聖書の窓」(1260年頃 製作)は後期ロマネスク様式ステンドグラスの傑作。「古い聖書の窓」には聖書の場面が下から上へと描かれている。
聖遺物
中央祭壇にはサファイア、ルビー、真珠など1000個に及ぶ宝石で飾られた黄金の棺が安置されている。棺には東方の三博士の聖遺物が納められている。東方の三博士とはベツレヘムで幼子イエスを発見したとされる三人の占星術師。12世紀、ケルンに存在した古い時代の大聖堂に、三博士の遺骨(聖遺物)が持ち込まれた。聖遺物のおかげで、ケルンはヨーロッパでもっとも重要な巡礼地の一つとなり、より立派な「神の家」を目指した現在の大聖堂の建設のきっかけとなった。
ゲロ大司教の十字架
祭壇脇のキリスト像は「ゲロ大司教の十字架」とよばれ、970年頃に造られたもの。キリストの死を、苦悩に満ちて描いた等身大の彫刻としては、ヨーロッパに現存する最古の作品。後の時代の張付け像のモデルになったと言われる。
洗礼者ヨハネ
大聖堂南側には、1842年にバイエルン王ルートヴィヒ1世が奉納したステンドグラスがある。1848年に挿入されたバイエルン・ステンドグラス(バイエルン窓とも)は、5枚の連作。これは洗礼者ヨハネ。
羊飼いの王たちと礼拝
バイエルン窓、羊飼いの王たちと礼拝。このステンドグラスのマリアと幼いイエスの両脇に居るのが東方の三博士。三博士の礼拝は、キリスト教美術が好んで取り上げるテーマの一つで、ケルン大聖堂にもバイエルン窓の他にシュテファン・ロホナーによる「ケルン市の守護者たち」が飾られている祭壇がある。
十字架から降ろされるキリスト
バイエルン窓、十字架から降ろされるキリスト。
聖霊降臨
バイエルン窓、聖霊降臨。
ステファヌスに対する投石の処刑
バイエルン窓、ステファヌスに対する投石の処刑。
北側5枚のステンドグラス
バイエルン窓に対面する北側5枚のステンドグラスは、1507年から1509年に寄進されたもの。古いステンドグラスは、中に不純物や気泡が入っていて、独特の表現をもたらす。そのため、ステンドグラスの修復でも当時の製法を用いてこのステンドグラスを再現している。
フライング・バットレス
フライング・バットレス(飛梁)。ゴシックの建築技術の一つで、高い天井を支える薄い壁が受ける圧力を分散させるため、外側から支えている。ゴシックは、それまで聖堂の壁は壁画で覆われた薄暗いものだったものを大きな窓とステンドグラスに置き換えた。ステンドグラスによっては壁自体が発光しているかのように見える光の壁が実現。大聖堂は神秘的な光りに包まれるようになった。
聖ペテロの鐘
南塔内部の鐘。聖ペテロの鐘とよばれ、1923年に鋳造された。ベルの装飾は彫刻家ハインリッヒ・ルナールによるもの。当初は、より大きな皇帝の鐘がここにあったが第一次世界大戦末期に戦争利用のため解体された。
参考文献
TBS THE世界遺産 / 週刊世界遺産 No.41 ケルンの大聖堂 / ケルン大聖堂パンフレット / 地球の歩き方 ドイツ(2014〜2015) / UNESCO公式ホームページ / ケルン大聖堂公式ホームページ / ワシントン記念塔公式ホームページ
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