概要
ニュー・ラナークは、1785年にグラスゴーの実業家デイビッド・デイルによってクライド渓谷の川沿いに作られた紡績工場と、そこで働く労働者のための開拓村である。19世紀初頭には、デイビッド・デイルの娘婿であり人道主義者として名高いロバート・オーウェンによって労働者のための住宅や学校などが整備された。1820年には村の人口は約2500人まで増え、イギリス最大規模の紡績工場となった。ロバート・オーウェンは、ニュー・ラナークの成功を機に、空想的社会主義者としての道を歩んだ。ニュー・ラナーク自身もまた、社会主義に影響を与えることとなった。ニュー・ラナークの紡績工場群は1968年まで操業を続けたのち閉鎖されたが、2009年現在でもジョージ王朝時代の住宅に約180人の住民が生活しているほか、かつて工場で働いていた工員達の家がユースホステルになり、第一工場はホテルに生まれ変わっている。また、さながらテーマパークのような視聴覚を駆使したライドアトラクションが建物内部に構築されているなど、現在ではニュー・ラナークの紡績工場群は人気の観光アトラクションとして生まれ変わっている。基本情報
遺産種別/登録基準
文化遺産/(ii),(iv)
登録遺産位置
グレートブリテン及び北アイルランド連合王国
スコットランド サウス・ラナークシャー州
北緯55度39分 西経3度46分
スコットランド サウス・ラナークシャー州
北緯55度39分 西経3度46分
登録遺産面積
資産 146ha
緩衝地域 667ha
緩衝地域 667ha
登録年月
2001年
登録基準の具体的内容
(ii)
リチャード・アークライトによる繊維製品のための新しい工場システムが、労働者と管理者に住宅その他の設備を提供する必要性が認識されたニュー・ラナークに持ち込まれた。デイビッド・デイルとその義理の息子ロバート・オーウェンは、19～20世紀に世界に広がる産業モデルを作り出した。
(iv)
ニュー・ラナークは、洗練され設備の整った労働者のための住宅だけでなく、精神的にも肉体的にも改善するよう考慮された公共施設が建設された。
(vi)
ニュー・ラナークの名前はロバート・オーウェンと、彼にとっての革新的な教育、工場改革、人材育成、国際協力、田園都市に関する社会哲学と同義となっている。またその社会哲学は19世紀以降の社会発展に深い影響を与えることであった。
ギャラリー
ニュー・ラナーク
ニュー・ラナーク村は、まったく新しい産業共同体として、1785年にデイビッド・デイルによって建設された。クライド川の水力を使用した紡績工場と工員用のアパート式家屋は、地元の砂岩を使って建造したもの。
織機の実演
メインの見学者センターでは、織機の実演の他、紡績工場で働いていた少女アニー・マクラウドの亡霊が往年のニュー・ラナーク案内するという設定の視聴覚を駆使したライドアトラクションが設置されている。
複合蒸気機関発電機
技術の変化に対応し、機械駆動に使われた水車は水タービンが取って代わり、1898年以降は、工場で水力発電も行うようになった。
水車
デイビッド・デイルはこの地に4つの水車を建設し、リチャード・アークライトの水力紡績機を導入した。これにより品質の優れた綿糸の大量生産が可能となった。
学校
ロバート・オーウェンは幼い子どもたちが工場で働くことを禁止し、「人格形成のための教育機関」として知られる建物の中に世界初の幼児学校と夜間学校をも含む進歩的な学校を設立した。
労働者の家
修復された労働者たちの家では、1820年代、1930年代の生活状況を垣間見ることができる。
オーウェンの家
オーウェンの生活様式や、オーウェンの社会改革家としての業績に関する展示がおこなわれている。
クライド川
クライド渓谷は、現在ではクライド滝野生生物保護区となっている。