概要
ペタヤヴェシの古い教会は、フィンランドに60あまり建設された木造教会の一つである。この教会はバイヤンネ湖につながる湖水路のそばに1763年から1765年にかけて棟梁ヤーコ・レッパネンによって築かれた。このおよそ50年前には、フィンランドはロシアに侵略され、戦禍と飢饉によりその人口は30万人にまで減少、復興の際には教会を中心に民族意識が高まり、フィンランド各地に教会が建設された。ペタヤヴェシの古い教会もその一つである。北欧の田舎町にありながら、イタリアなどヨーロッパ大陸の教会建築の影響を受けた建築様式と北欧のログハウスの伝統が融合したペタヤヴェシの古い教会は、一つの時代を象徴する優れた建造物として世界遺産に登録された。1879年には近隣に新しい教会が建設され、古い教会は使用されなくなったが、1920年代の伝統建築の調査に寄って歴史的な価値が見出され、修復された。現在は夏の間には日曜の礼拝や結婚式などで教会として使用されている。基本情報
遺産種別/登録基準
文化遺産/(iv)
登録遺産位置
フィンランド共和国ケスキ=スオミ県
北緯62度15分 東経25度10分
北緯62度15分 東経25度10分
登録遺産面積
情報なし
登録年月
1994年
登録基準の具体的内容
(iv)
ペタヤヴェシの古い教会は北欧の伝統的な木造教会建築の傑作である。
ギャラリー
湖畔の教会
教会は湖の周辺から船で訪れる事ができるよう、湖の畔の街、ペタヤヴェシに建てられた。ペタヤヴェシは人口4000人程度の小さな田舎町である。
全景
1765年にヤーコ・レッパネンにより完成したときは翼廊と身廊部のみの十字型の教会であった。急勾配の寄棟造りの屋根はゴシック様式を想起させる。鐘塔は1820年代にヤーコ・レッパネンの孫エリック・レッパネンによる増設であり、後に二つの建物は廊下で接続された。1879年に新しい教会が完成した後は、庭は墓地として使用されていたが、建物はそのまま残されていた。1920年代に修復が行われ現在に至る。
鐘塔
1920年代にエリック・レッパネンによって作られた鐘塔。3層からなり、3層目には八角形の明り取りが備えられた。もとは聖堂の西側に建てられた別棟であり、礼拝に訪れる人々の護身用の武器を預かる倉庫として使用された。
設計図
教会は翼廊と身廊の長さが1：1のギリシャ十字の教会。そのモデルはストックホルムの聖カタリナ聖堂と言われる。
屋根
1953年に修復された屋根。魚の鱗のような屋根の木片は防腐剤として塗られたタールにより独特の風合いを見せる。
繋ぎ梁
翼廊と身廊の交わる建物の中心部の繋ぎ梁にには屋根が壁を圧迫しないように力を分散させる役割が与えられている。これにより三角屋根の下にドーム型の天井をはめ込むことが可能となった。
丸天井
ヤーコ・レッパネンの工夫により作られたルネサンス建築らしい丸天井と急勾配の屋根により、石造りの大聖堂のような広く高い内部構造を実現した。
1764
1764とは、この屋根が手がけられた年を表す。上の文字列はこの部分を手掛けた棟梁の名前。
シャンデリア
シャンデリアは地元の工芸家に寄って作成された。
説教壇
説教壇は修復の際、絹のような光沢を放つように透明塗料が塗られた。
天使像
地元の芸術家によって作られた天使像などの彫刻。一体一体姿が異なる。
説教壇下の彫像
説教壇を支える柱に施された彫像。その表情や色合いから素朴な印象を与えられる。
内陣
彫像とは異なり一般的な宗教画が飾られている。
階上廊
現在観光においては立ち入ることが出来ないが、この教会は階上廊も備える。
階上廊の彫刻
階上廊の彫刻もまた、地元の工芸家によって作られたものである。
校倉造
建物は北欧で一般的に見られるログハウス、いわゆる校倉造で作られている。
信徒席
信徒席は長い年月の間にすり減って輝きを得たという。
地下埋葬
地下埋葬のため床板は短めに作られている。