ラヴェンナの初期キリスト教建築物群
Early Christian Monuments of Ravenna
概要
ラヴェンナの初期キリスト教建築物群は、5~6世紀ごろに建てられた初期キリスト教建造物の特徴をそなえるビザンチン様式の聖堂、霊廟、礼拝堂などである。ラヴェンナはそもそも5世紀に西ローマ帝国の首都として栄え、続いて東ゴート王国の支配を受けた後6~8世紀にかけてビザンチン帝国の総督府が置かれた重要拠点となった。初期キリスト教建造物の多くには鮮やかなモザイク装飾が見られるが、ラヴェンナにおけるそれは特に優れた優美さを備えると言われ、詩人ダンテは「色彩のシンフォニー」と称した。膨大な数のテッセラというガラスや石のかけらを一つ一つ埋め込んでいくという手間のかかるこの芸術は、その特徴から色褪せることなく、ルネサンスの画家はこれを永遠の絵画と呼び讃えた。ラヴェンナの初期キリスト教建造物群は、建物の完成からおよそ1500年が経つ現在でも、ほとんどがほぼ完璧に残っている。
基本情報
遺産種別/登録基準
文化遺産/(i),(ii),(iii),(iv)
登録遺産位置
イタリア共和国
エミリア・ロマーニャ州
北緯44度25分 東経12度11分
登録遺産面積
資産 1.32ha
登録年月
1996年
登録基準の具体的内容
(i)
ラヴェンナの初期キリスト教建築群は、そこにあるモザイク絵画の極めて優れた芸術性のため、非常に重要なものである。
(ii)
ラヴェンナの初期キリスト教建築群はヨーロッパ文化史の重要な時期に芸術的宗教的な関係と交流を示す重要な証拠であるために比類のないものである。ラヴェンナのモザイク画は、ヨーロッパにおけるこの種の芸術の最も良い状態の一つであり。西洋と東洋の主題と技術の融合を示すため重要性が高まっている。
(iii)
ラヴェンナの初期キリスト教建築群には、ギリシャローマの伝統、キリスト教の象徴、東方と西洋の様式が象徴する後期ローマ帝国の文化の優れた融合を含む優れた芸術性を示す。
(iv)
登録された史跡は紀元6世紀における宗教的な葬送芸術と建築の縮図である。
ギャラリー
サン・タポリナーレ・ヌオーヴォ聖堂
6世紀初めに、東ゴート王国の創始者大王、テオドリックにより建てられたアリウス派の教会。アリウス派はその後異端として排除されたため、アリウス派の建造物として貴重なものの一つ。但しラヴェンナは東ゴート王国の支配の後ビザンチン帝国により支配を受けたため、内装等が改装された可能性がある。
サン・タポリナーレ・ヌオーヴォ聖堂
永遠の絵画と称されるモザイクにも弱点がある。おそらくモザイクの壁面への固定が緩んだためにモザイクの描かれた両壁は微妙に内側に傾いているという。また建物自体の破損老朽化に気づきにくい。
黄金の衣服をまとった聖女たち
黄金の衣服をまとった聖女が並ぶ。その先には東方三博士と幼子イエスを抱く聖母マリアと天使が並ぶ。
東方の三博士
東方の三博士とはベツレヘムで幼子イエスを発見したとされる三人の占星術師。三博士の礼拝は、キリスト教美術が好んで取り上げるテーマの一つ。
聖母マリアと天使
建物左壁は「東方三博士と22人の聖女が貢物を捧げる図」。
イエス・キリストと天使
建物右壁は「貢物を手にした26人の殉教者が王の宮殿からキリストのもとに向かう図」。
修復の跡
中央の聖女の右手の部分は書いた絵。100年以上前の修復で何らかの理由によってテッセラが埋めきれなかったらしい。
ガッラ・プラチディア霊廟
西ローマ帝国のホノリウス帝の妹で、皇帝とともにラヴェンナの基礎を作りまたラヴェンナにキリスト教建築繁栄の礎を築いたガッラ・プラチディアによって建てられた霊廟。赤レンガで覆われた小さな建物。
ガッラ・プラチディア霊廟の天井
穏やかな青い夜。6~7世紀の織物であるコプト織りに見られる珍しい図柄。
「良き羊飼い」
構図が優れていることで名高い「良き羊飼い」の図はガッラ・プラチディア霊廟の入口付近の壁面に描かれている。
サン・ヴィターレ聖堂
八角形の平面図を持つサン・ヴィターレ聖堂は、547年に完成したビザンチン帝国時代の聖堂。
「イサクの燔祭」
「イサクの燔祭」はアブラハムが神のお告げに従い一人息子イサクを生贄にしようとするが、神はアブラハムの信仰心を認めイサクは生贄にならず、むしろその子孫は神の祝福を受けたという聖書の一場面。
アベルとメルキゼデク
神殿の箱を前にアベルとメルキゼデクが礼拝している様子。
皇帝ユスティニアヌス
ビザンチン帝国を再び地中海の覇者へと押し上げ、最大版図を築いた皇帝ユスティニアヌス。
皇妃テオドラ
ユスティニアヌスのモザイク画の対面に描かれるのは皇妃テオドラ。
イエス・キリスト
草花が茂る楽園にざすキリストが聖ヴィターレと大司教エクレシウスを従える姿。
ドーム天井
モザイク画は失われ、現在は18世紀に描かれたフレスコ画で覆われている。
正教徒洗礼堂
450年頃に完成した洗礼堂。ドーム天井のモザイク画の中心にはキリストが洗礼者聖ヨハネから洗礼を受ける場面が描かれている。
サン・タポリナーレ・イン・クラッセ聖堂
街の中心から南に5km外れた野原に佇むサン・タポリナーレ・インクラッセ聖堂。549年完成のバシリカ式建築。
サン・タポリナーレ・イン・クラッセ聖堂
ラヴェンナの他の聖堂に比べ淡い色使いが特徴の聖堂内部。
十字架のモザイク
地上にはラヴェンナの守護聖人聖アポリナと十二使徒を表す羊、天井には旧約聖書の預言者モーセとエリアが描かれている。十字架の左右には始まりと終わりをしめすαとωの文字、十字架中央にはキリストが描かれている。ダンテはこのモザイク画について詩で触れている。「ここで私の記憶は詩人たる私の手に余った。その十字の光がキリストの姿を描いたのだが、それを表現するだけの言葉が見つからないのだ」
参考文献
TBS THE世界遺産 4K特別編 / UNESCO公式ホームページ / 週刊世界遺産 No.55 ラヴェンナの初期キリスト教建造物群 / 地球の歩き方 イタリア / すべてがわかる世界遺産大辞典 下 / 創世記
Special Thanks: A.Kinoshita
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