シエナ歴史地区
Historic Centre of Siena
概要
シエナ歴史地区は13世紀後半に始まるシエナ繁栄の時代の様子を今に伝えている。シエナはその北約60キロにある都市国家フィレンツェとトスカーナの覇権をめぐり繰り返し対立した。宗教においても、フィレンツェがローマ教皇派が実権を握り、シエナで優勢を誇っていたのは神聖ローマ帝国皇帝派であった。1260年のフィレンツェとの衝突では数の劣勢にもよらず勝利し、この後シエナはトスカーナでの覇権を握った。12世紀以来、商業と金融業で栄えたシエナはその財力を背景に芸術文化を花開かせた。絵画においてもシエナ派が確立され、ルネサンス前夜のヨーロッパに大きな影響を及ぼした。しかし14世紀半ばのペストの大流行をきっかけに、全盛期には10万を数えた人口も3万5千人まで激減し、町は急速に衰退。16世紀にはフィレンツェに併合され、その後は歴史の表舞台に立つことはなく現在に至る。
基本情報
遺産種別/登録基準
文化遺産/(i),(ii),(iv)
登録遺産位置
イタリア共和国
トスカーナ州
北緯43度19分 東経11度19分
登録遺産面積
資産 170ha
緩衝地域 9,907ha
登録年月
1995年
登録基準の具体的内容
(i)
都市と建築の特徴から、シエナ歴史地区は人類の創造性を示すものであり、また、人類の芸術と審美的能力を物質的な形で表している。
(ii)
芸術文化、その建築、絵画、彫刻、都市計画が示す模範は特に強く文化的な影響力をもち、それは単にシエナ共和国の全版図のみならず、13世紀から17世紀までのイタリアそしてヨーロッパまでも影響を与えた。
(iv)
街の構造とその発展は、何世紀にも渡って途切れることなく、統一保存されたデザインによって、シエナは中世のルネサンス時代のイタリアの町の最も貴重な例の一つとなっている。
ギャラリー
大聖堂
暗緑色と白の縞模様が特徴的な、イタリアゴシックの最高傑作の一つとされる大聖堂は12世紀に起工、14世紀末に竣工した。ファサードは彫刻家ジョヴァンニ・ピサーノによる彫像が並んでいる。開口部が上層階に向かうにつれ末広がりとなっているロマネスク様式の鐘楼は13世紀末に完成したもの。1260年のフィレンツェとの衝突では教皇党都市の援軍を擁するフィレンツェ軍が数の上では圧倒的に有利だったが、この決戦前夜には建設途中のこの大聖堂に市民が集まり祈りを捧げたという。
大聖堂新正面
フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂に対抗して大聖堂の改築計画が始まった。もとの大聖堂の身廊を翼廊とし、翼廊を身廊へと拡張する計画であったが、ペストなどによる人口減少により財政難となったため、工事は中断。工事途中であった大聖堂の新正面が今も残されている。
大聖堂の身廊
内部も暗緑色と白色の大理石で縞模様となっている。床面は遠近法を取り入れた象嵌細工で装飾されている。
大聖堂の円蓋
円蓋は外装工事の仕上げとして13世紀中頃に作られた。十二角形の円蓋内側下方には、多数の守護聖人や預言者が描かれた小円柱の間がある。
大聖堂のステンドグラス
シエナ派の画家ドゥッチョにより描かれた大聖堂正面のステンドグラス。聖母の死や聖母の被昇天などが題材となっている。
大聖堂の説教壇
ゴシックの頂点を示す傑作と言われる説教壇は、ジョヴァンニ・ピサーノやその父ニコラ・ピサーノなどにより白大理石で作られた。訪問時は修復工事中のため、実物は覆われてしまっていた。
ピッコローミニ図書館
大聖堂の翼廊に増設された図書館は枢機卿フランチェスコ・ピッコローミニが教皇ピウス2世の蔵書保管のために1495年に設置した。
大聖堂付属美術館
大聖堂の改築計画で残された大聖堂新正面にあるのが大聖堂付属美術館。ゴシック彫刻やシエナ派絵画が展示されている。
ロムルスとレムス像
ローマ建国神話に登場する兄弟の子孫が建国したとされるシエナ。その兄弟がロムルスとレムスで、大聖堂の脇にもこの像が立っている。
市庁舎とマンジャの塔
14世紀初頭に完成したゴシック様式の市庁舎と、高さ102メートルのマンジャの塔。市庁舎はかつては立法、司法、行政を担う都市国家シエナの自治と独立の象徴。マンジャの塔は、初代の鐘つきが非常に怠け者で「マンジャ・グァダーニ(道楽者)」と読んだことからその名がついたといわれる。
カンポ広場
当時のシエナは「9人体制」という9人の市民代表が政治を動かしていた。世界一美しい広場とも言われるカンポ広場は、そのことを示すように敷地が9つの楔形に区切られている。
カンポ広場の都市景観
「カンポ広場に面する建物はすべての窓に柱を付け同じ様式に揃えること」これは約700年前に都市景観の保護を定めた最古の法令とされる。
シエナ派絵画
叙情的な美しさのうちに微妙な心理的陰影を漂わす聖母がシエナ派絵画の特徴であり、ドゥッチョやマルティーニの「荘厳の聖母」が知られる。
シエナの町並み
旧市街には中世の町並みがそのまま残されている。町の奥にはかつてシエナが支配したオルチア渓谷が広がる。
参考文献
TBS 世界遺産 / UNESCO公式ホームページ / 週刊世界遺産 No.48 シエナの歴史地区 / 地球の歩き方 イタリア / すべてがわかる世界遺産大辞典 下
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