ヴィースの巡礼教会
Pilgrimage Church of Wies
概要
ヴィースの巡礼教会は、ドイツロココ様式の最高傑作の一つとして知られる。この地に保管されていたキリスト像「鞭打たれるキリスト」が1738年に起こした奇跡をきっかけに建設された。その奇跡とは、ヴィース村に住むマリア・ローリーが祈りを捧げていると、ある日キリスト像の目から涙が流れ落ちたというものである。救世主であるキリストが涙を流すということは、キリスト教徒にとって意味の深いメッセージであった。この伝説はたちまち広がり、奇跡のキリスト像をひと目見たいと押し寄せた巡礼者のために、マリアの家の隣に小さな礼拝堂が建てられた。現在の聖堂は増え続ける巡礼者のために「鞭打たれるキリストの巡礼聖堂」として建設されたもので、建築家ドミニクス・ツィンマーマンと、その兄でフレスコ画家のヨハン・バプティスト・ツィンマーマンによって1757年に完成した。現在でも、100万人を超える信仰深い巡礼者や芸術愛好家がこの地を訪れている。
基本情報
遺産種別/登録基準
文化遺産/(i),(iii)
登録遺産位置
ドイツ連邦共和国バイエルン州
北緯47度40分 東経10度54分
登録遺産面積
資産 0.1ha
緩衝地域 8.4ha
登録年月
1983年
登録基準の具体的内容
(i)
田園地帯に建設された巡礼教会であるヴィース聖堂は、ロココ芸術の最高傑作の一つである。
(iii)
ヴィースの巡礼教会は、文化的、宗教的伝統を格別に示すものであること。
ギャラリー
外観
聖堂は牧草地の中に建つ。「鞭打たれるキリストの巡礼聖堂」として建設されたが、この地に親しみを持つ人々はここを「牧草地(ヴィース)聖堂」と呼び続けた。ヴィースとはドイツ語で草原を意味する。
内装
過剰ともいえる装飾が特徴のロココ様式。内陣の装飾と身廊天井のフレスコ画は一続きになっているように見えるように作られている。聖堂内部はあらゆる方向から光が差し込むように設計されている。
身廊天井のフレスコ画
身廊天井のフレスコ画は「キリストの再臨」を主題とした傑作で、「天から降ってきた宝物」といわれる。
キリスト像
鞭打たれるキリスト像は1730年にヴィース近郊のシュタインガーデンの修道士によって作られたが、鎖やロープにつながれて血を流した痛々しいキリスト像に人々はショックを受け、近隣の旅籠の屋根裏にしまわれた。数年後にヴィース村に住む農婦マリア・ローリーが埃を被ったキリスト像を見つけ、家に持ち帰り寝室で毎日祈りを捧げていた所、数ヶ月後の1738年6月14日にキリスト像が涙を流し始めるという奇跡が起こった。
ペリカン像
キリスト像の頭上にはペリカンの像が置かれている。ペリカンの母は何も餌がないときには自らの胸を裂き、心臓の血でヒナを養うと言われたことから、ペリカンは人類救済のため十字架で血を流したキリストの象徴とされる。
旧礼拝堂
押し寄せる巡礼者のためにマリアの家の隣に建てられた小さな礼拝堂。
参考文献
週刊世界遺産 No.76 ヴュルツブルクの司教館とドイツ南部の遺産 / NHK シリーズ世界遺産100 / UNESCO公式ホームページ
BACK