概要
広島平和記念碑（原爆ドーム）は、1945年8月6日、人類史上初めて原子爆弾が実戦使用された場所に残る建造物の一つである。特に本物件は原爆投下時そのままの姿を保っている唯一の建造物である。2013年現在も、広島市の手によって保守管理されている原爆ドームは、人類が作り出した強力な兵器である原子爆弾によって地獄と化した広島の惨劇を伝えるために、あるいは人類が二度とこのような悲惨な出来事を繰り返さないよう、受難の日から時を止めたまま存在し続けている。原子爆弾を含めたすべての核兵器廃絶と、人類が語り継ぐべき平和への誓の証として、原爆ドームは世界遺産に登録された。基本情報
遺産種別/登録基準
文化遺産/遺跡、史跡
(vi)
(vi)
登録遺産位置
広島県広島市中区
北緯34度22分 東経132度26分
北緯34度22分 東経132度26分
登録遺産面積
資産 0.40ha
緩衝地域 43ha
緩衝地域 43ha
登録年月
1996年12月
登録基準の具体的内容
(vi)
歴史的価値や、建造物としての価値は認められないが、世界平和を目指す活動の祈念碑として、世界中でも例を見ない建造物である。
ギャラリー
慰霊
1945年8月6日、人類史上初めて、広島に原子爆弾が投下された、その残骸。原爆ドームは、受難の日から時を止めたまま存在し続けることであの日の事実を語っている。
旧広島県産業奨励館
旧広島県産業奨励館（現・原爆ドーム）は、チェコ人の建築家ヤン・レッツェルの設計で1915年に広島県物産陳列館として建設された（33年、広島県産業奨励館）。機能性と合理性を重視するセセッション洋式、威風堂々としたネオバロック様式、この2つを巧みに取り入れた鉄骨とレンガ造りの建物。
恐るべき原爆
原爆ドーム保存の機運を高めたのは、1歳の時に被曝した楮山ヒロ子さんの高校時代の日記帳。1959年8月6日、楮山さんは原爆に対する思いを日記に綴った。「恐るべき原爆は二十世紀以後忘られてあの痛々しい産業奨励館だけがいつまでも後世に訴えてくれるだろう」楮山さんはこの翌年原爆が原因となる白血病で亡くなった。
「ドーム」の由来
建物の外壁は1階部分を残して殆ど吹き飛ばされたものの、中央部は破壊を免れドームの鉄骨を残した独特の風貌が生まれた。産業奨励館は、横からの力に弱いレンガ造りだったが、爆心地から160mと近くにあったため、上空約600mで炸裂した原子爆弾の爆風をほぼ垂直に受けた。このため壁が吹き飛ばされず、現在の形が残されたと考えられている。
復興と景観
被曝から75年は草木も生えないと断言する学者もいたが、荒地で木々は育ち、街は復興を遂げた。しかし、周囲の都市化は「原爆ドーム周辺の景観を破壊している」との意見もある。
元安川
原爆投下時、多くの人々が水を求め、行き倒れた元安川。
相生橋
原爆ドームは相生橋のたもとに位置する。
データベース化
広島市では、原爆ドームがデータベース化が行われた。煉瓦一つ一つの形や大きさ、ヒビ割れの箇所や補修した箇所などチェック項目は2万ヶ所にも上る。このデータにより、たとえ煉瓦一つが落下しても直ちに対処できるようになった。
鉄骨による補強
今にも倒れそうな壁は内側から鉄骨のブリッジを縦横に何十本も巡らせ支えられている。
樹脂による補強
もろくなったレンガや壁のひび割れた部分には特殊な樹脂（エボキシ樹脂）が注入されている。
状態を保つ
どれだけ時をへようとも、この場所だけはあの日の状態が保たれている
平和記念公園
平和への願いを込めて、爆心地近くに作られた公園。この碑は「原爆死没者慰霊碑」の名で知られている。中には原爆死没者名簿が納められている。
慰霊に訪れる市民
原爆の爆心地近くに作られたこの広い緑地帯は、市民の憩いの場であり、平和を誓う祈りの場である。現在でも、慰霊に訪れる市民が後を絶えない。
広島平和記念資料館
平和記念公園内にある広島平和記念資料館。原爆の被害の様子や被爆者の遺品など、原爆にまつわる様々な資料が展示されている。「人影の石」や、中身が炭化してしまった弁当箱、8時15分で時を止めた懐中時計などが知られている。
原爆の子の像
原爆の子の像。原爆由来の白血病で無くなった佐々木禎子さんがモデルとなった。
平和の鐘
「ドームは反人道性の象徴とは思うが、世界遺産に似合わない。今後は世界遺産に戦争関連の遺跡を入れるべきではない。」これは、アメリカ代表団のコメントである。原爆ドームを恒久平和を求める誓のシンボルであるとする申請理由はすべての国に理解されるものではなかった。しかし、1945年8月6日午前8時15分、人類史上初めて原爆が兵器として使われたこの一瞬を留めるために、原爆ドームは時を止めている。