松本城
Matsumoto-Castle
概要
松本城は、黒漆塗りの外壁が特徴の複合連結式層塔型天守を持ち、その外観から現在では烏城とも呼ばれる。現存12天守の一つであり、その中では唯一の平城。また天守は最大の姫路城に次ぐ大きさを誇り、層塔型としては最大。12天守の中でも、本城の天守は国宝に指定されており、姫路城、彦根城、犬山城、松江城とともに国宝五城と呼ばれる。松本城天守は外観こそ層塔型であるが、内部構造からは望楼型としての性格も持ち合わせている他、大天守より辰巳附櫓・月見櫓が連結されているなど他の珍しい構造であることが知られる。望楼型天守から層塔型天守への過渡期的性質を持つ一方で、後期望楼型天守として知られる姫路城天守で見られる巨大木造建築としての、あるいは要塞としての工夫が松本城天守では見られないなどといった様式面でも、歴史資料からも、天守の建造年すら定かで無い。現在最も有力な説は、最初連結式望楼型天守として築かれ、後に層塔型として改築されたというものである。ちなみに2016年現在、松本城は姫路城のように世界遺産でもなければ、彦根城のように世界遺産暫定リストにも掲載されていないが、現在単独で登録されている姫路城をシリアル・ノミネーションとして「日本の近世城郭群」の名前で拡大し、他の国宝四城とともに世界遺産として登録する計画がある。
基本情報
指定文化財
特別史跡・国宝
登録史跡位置
長野県松本市
様式
縄張 輪郭式・梯郭式複合縄張・平城
天守 複合連結式層塔型5重6階
ギャラリー
史蹟松本城
松本城は築城以来、大きな戦禍に巻き込まれなかったため、当初の保存状態を維持している。
天守と埋橋
天守の外観は入母屋破風を設けない層塔型。各階に狭間を設けるなど、攻撃的な性格を持つ。通常は埋橋より続く埋門より入場することになるが、2011年6月の長野県中部地震により石垣に損傷見られたため、2012年現在埋門からの入場はできない。
連立式天守
大天守奥が乾小天守、右が辰巳附櫓・月見櫓
本丸御殿跡より
本丸御殿跡より天守を望む。本丸御殿は江戸年間に焼失したため現存しない。天守の外壁は黒漆のため、劣化防止のために観光客が少なく、気候が黒漆塗装に適している9月に毎年上塗りされる。
一ノ門
1960年再建の一ノ門。五七桐の紋も再現されている。
狭間
このように縦長のものは矢狭間。正方形に近い形のものは鉄砲狭間。矢狭間は60箇所、鉄砲狭間は55箇所設けられている。姫路城と違い、蓋が設けられていない初期的構造。
窓の格子
窓の格子は剥き出しの木材で、方形である。ここにも姫路城とは違いが見られる。姫路城のものは様々な角度からの攻撃に備え八角形で、また防御力を高めるため木材を鉄板で覆い、更に火に強い漆喰でそれを覆う工夫が施されている。
石落
石垣を登ってくる敵に対して石を落としたり、弓や鉄砲を使って撃退する装置。その数は11個と他城と比べ数が多い。ここでも、姫路城に見られる石落の蓋が見られないという違いがある。
大天守1階
大きな建物は風の影響を受けやすく、それに対する対策が必要となる。姫路城では五重塔のように心柱を用いているが、松本城ではそのような工夫が見られない。
武者走
天守1階の周囲1間通りは、内側の床より50cm低くなっている。これを武者走と呼ぶ。
かぶら懸魚
天守の千鳥破風と入母屋破風(最上階)にとりつかられているかぶら懸魚。実物は白漆喰が塗り重ねられている。
大天守3階
3階の低い天井に窓のない空間は、松本城天守の特徴の一つ。内部構造が望楼型である一方、外観は入母屋を設けず、強引に寄棟を形成し、層塔型天守としたために生まれた。内部構造としては2重からなる入母屋造の大屋根の屋根裏部屋。
大天守4階
4階は柱が少なく天井が高く、兵庫として使われた他の階に比べ居住性が高い。有事には、最上階である6階とともに、座所に当てられた場所とされる。
大天守6階
有事には居所となると考えられるが、天井は設けられていない。写真では建材で隠れてしまっているが、守護神である二十六夜神が祀られている。
天守西側
最上階より天守西側を望む
乾小天守
最上階より乾小天守を望む
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