もともとこのシリーズはあまりグラフィックが良いとはいえなかったが、オープンワールド化して一つ一つのオブジェクトの品質が今一つになったような気がする。見かけのグラフィックスの負荷はそれほどではないように見えるが、相変わらず妙なスタッターが現れたり、被写界深度表現に失敗して妙なアーティファクトが出るなどは気になる。キャラクターのモーションも前時代的なのは相変わらず。鏡の表現は、もちろんレイトレーシングなどはもちろん使っていないし、当然視点も固定ではないのでかなり絶望的なことになっている。特に意味のあるオブジェクトというわけでもないので、置かなければ良いのにと思ったり。それと、今作のシャーロックはワトソン博士と出会う前のかなり若い頃なのだが、前作以前のシャーロックが年老いているとしても、ずいぶんと顔が違う。誰だこいつ。ちなみに最終盤にワトソン博士も出てくるが、こちらもまぁまぁ顔が違う。

オープンワールド化したせいか、前作のロンドンの雑踏はかなり作り込まれていてリアリティがあったが、今作は全体的にイマイチ。楽曲も、ミステリーらしくて良いといえば良いのだが、せっかくのシャーロック・ホームズ。もう少しちゃんと耳に残る曲を作ってほしかった。

今作も記憶の宮殿など、シャーロック・ホームズらしい謎解き要素をうまくゲームに落とし込んでいると思う。ちょっとしたミニゲームも対して難しくなく、また、推理ものなのに何故か時々アクションシーンがあるがそれはいずれもスキップできる仕様が、このゲームをプレイするユーザーに対してフレンドリーな仕様であると感じた。ちなみに私は戦闘は全無視した。本編をプレイするだけなら、それで問題ないが、収集要素を踏まえると報酬が少なくて厳しいかもしれない。なお、本作は昨今の高速SSDに対応した設計なのか、単純にデータサイズが小さいのかわからないが、ロード時間がかなり短いのは有り難かった。ゲームプログラムの場合は、単純にスペック上の転送速度が速くてもなにかとボトルネックがあってロード速度はそれほど短縮されないもの。きっと何らかの工夫があったものと信じたい。

本編はアドベンチャーゲームとして可もなく付加もなくという感じ。ちょうどいい長さといえば、まぁそうかもしれない。今作はオープンワールドになったということで本編とは別の、いわゆるサブクエストとしていくつかの謎解きが用意されているし、個人的には全く必要ないと思ったが拠点の家具などを取り揃える収集要素がある。

ジョンとかいう空想上の存在が今作に登場するので前作までよりちょっとファンタジーじみているが、それでもまだ謎解き自体は現実的な結論に至るのでちゃんとシャーロック・ホームズしていると思う。シリーズ通して同じで、今作も相変わらず気になるのが、基本的にどの容疑者も、ドラマのように追い詰められてベラベラと事の顛末を話すわけではないので、犯人として選んだ相手が本当に犯人だったか、わからないままその後なんのフォローもないのは残念。それでも、前作までより謎解きが簡単になったような気もする。あとは恩赦を選ぶと白状してくれる犯人もいたので、全パターンを見て回れば回答が見えやすかったかなと思う。ただ、最後の選択は、どれを選んでもその選択肢が正しかったかのようにストーリーが進むので、正史がどれなのか正直気になる。