インディーズゲームとは思えないほどのグラフィックに驚嘆する。最近流行りのレイトレーシングが採用されていないというだけで、他に指摘するような点はない。ゲームの導入部分で主人公のネコチャンがいる緑生い茂る廃墟的な雰囲気も抜群だし、奈落の底に落ちてからのゴミ山もまるでピクサーの映画ウォーリーの冒頭出てきてもおかしくないようなほど精細に描かれている。主人公がネコチャンということもあって、細かなオブジェクトの多い本作であるが、あからさまに造形が雑なオブジェクトなどは見られなかったので、ジオメトリ負荷的にもかなり突き詰めているのではないかと思う。もちろん、膨大なジオメトリ量で圧倒するだけでなく、シェーダーの面でもかなりハイレベルな印象だ。主人公はネコチャンなので当然ふさふさなわけだが、しっかりファーシェーダーが反映されてちゃんとフサフサの、いかにも柔らかそうな、ネコチャンに仕上がっている。ネコチャンの瞳もちゃんとネコチャンしていて水晶のように透明で引き込まれる瞳、光を反射してキラリと光る瞳、いずれも美しい。今や当たり前の技術となった感のある物理ベースレンダリングもおそらく採用されているだろうほど物質の表面は現実味があるし、環境光の表現も実に素晴らしい。光量はさておき空間に満ちた光のお陰で、不自然な影も発生していない。そして極めつけはリフレクションである。そもそもこのサイバーパンクな世界においてリフレクションは非常に重要な要素であった。レイトレーシングこそ使っていないものの、従来技術として知られる環境マップとスクリーンスペースリフレクション（SSR）などを組み合わせることにより極めてリアルな表現を実現している。普段ネコチャンの背中に収まっているB12は正しく光源として設定されているのでロボットたちやガラス面に反射して映るし、アンビエントオクルージョンの効果なのかネコチャン自身もレイトレーシングで実現したときのようにくっきりと映っているわけではないが、ぼんやりと反射しているようにみえる。全編を通して、ピクサーあたりの映画でも見ているような感覚となるほど映像表現が素晴らしかった。ただし、前半の敵ZURKが絶望的に気色悪くて生理的に無理であった。

個人的に好きな音楽かどうか、といわれれば別に好きではないが、世界観に合った音楽が奏でられている。SEはグラフィックのレベルの高さに合った高品質のものだった。

ニャーと鳴くにはBボタンを押す。かわいい。くぁｗせｄｒｆｔｇｙふじこｌｐ。この文字列をまさか海外インディーゲームのローカライズ版で見ることになろうとは。メジャータイトルであってもここまでローカライズが丁寧にされているものばかりではないので、衝撃的なローカライズ品質の高さだ。それもそのはず、この作品、PC版も発売されているが日本語ローカライズはまさかのSIE。これでよくおま国にならなかったものだと思う。ローカライズを褒めるだけでなく、これはよくできているなぁと思ったのが、当たり前だがネコチャンは背が低いのでどうしてもネコチャンとカメラの間にオブジェクトが来る場面も多いのだが、基本的にそういった場合はオブジェクトは半透明化してくれるお陰でとても見やすい映像となっていた。ただもちろん褒めるところばかりではない。本作はオートセーブしか無いのだが、基本的にチェックポイント方式でどこかに到着しなければセーブデータは更新されない。一部の章は一本道を進むというよりも探索がメインであるので、こういった場面では他の場所と比べて相対的に長い時間セーブされないのが、困りものだった。それと致命的な問題はネコチャンが画面下部にいるのでカメラの回転軸とは異なっているせいで3D酔いが発生しやすいのが少し辛かった。が、まぁネコチャンがかわいくてかしこいのでOKです。

値段から言えばボリュームは相応といったところ。ただしこの評価では価格に対してどうのという評価はしていないのでこの点数。とはいえ、あまり長すぎてもダレるし。

作中多くは語られない。ただどうやら人類は滅んでしまったらしかったこと、なぜかロボットが自我を持って行動し始めたこと。仲間のロボットB12は元人間であったことなど。断片的な情報から世界を知ることになる。とはいえネコチャンの目的は外の世界に出ることなので、それ以上の情報は基本的には世界を彩る脇役にすぎないかもしれない。よくある雰囲気ゲーよりはそういった情報がわりと具体的に描かれている分、考察のしがいもあるし、相対的に良い結果となったと思う。あとなぜかBTTFへの大胆なオマージュが中盤に出てきたのは個人的にツボ。