本編とボーナスシナリオ1が実写なので特に何もなければ5点のはずだが、今作では、写真一枚に動きや感情を表すために実際に演技したものを撮影している。（要するに、テレビドラマのビデオカメラのかわりにスチールカメラを使っているということである。）そのことを加味して、7点と考えた。
しかし、ボーナスシナリオ2のカナン編ではアニメ作品となっているが、1枚絵を拡大縮小したり、回転、移動させたりするような古典的な表現を行い、かなり雑なつくりだと感じたので、1点減点の6点とした。

本編ではまったく文句のつけようのないものだった。生音を取り入れており、美しい音色が作品を彩る。テーマ曲が秀逸なのに加え、場面に合った音楽もこれまた秀逸である。実に多様な音楽において作品の雰囲気をうまく作り出している。個人的にはタマ編の穏やかな音楽が好みだ。
ただ、これもまたボーナスシナリオ2のBGMは本編とは作曲家が違うのか、どれもこれも似たような音楽で飽きやすいものだった。
ボーナスシナリオ1に関しては、本編やボーナスシナリオ2とは違う作曲家であったが、個人的には一番好みではあった。ただし曲数の少なさや似たような音楽という点ではボーナスシナリオ2と大差ない。

本編は、よくもまあこんなものを考え出したなと感心するくらいよく出来ている。スケールがやたらと大きくなるし、最後の最後までだれが敵で味方なのかわからないというのもよく出来ている。最初から謎の人物タマが主人公に入っているし、彼女はまあプレイヤーの一部はうすうす気付いていただろうが誘拐されたマリア。記憶を失っているというのもびっくりだが、それ以上に何故誘拐されたはずなのに、タマなのか。そして亜智編では、亜智とマリアの妹であるひとみ、今作のヒロインだが、彼らを襲う二つの勢力。ひとつはマリアを誘拐した犯罪者グループだが、まさかもう一人が、主人公の一人である加納の尊敬する上司である建野刑事であるとは。そしてこの事件には亜智の父親も深く絡んできているという。そして加納編。いわゆる熱血漢である。彼の成長の物語、というべきか。上部の意味不明な指示、仲間なのかなんなのかよくわからない外国人との行動、プレイヤーも疑心暗鬼になるという。ひとみとマリアの父親である大沢が主人公の大沢編では非常に暗くシリアスな展開。前作忌火起草を思い起こす。そこに実に不気味な刑事梶原。大沢のいくところに現れ、この誘拐という現状で意味不明なジョークを飛ばす。緊張感のなさから逆に不気味に感じる彼だが、物語中盤以降、大沢と打ち解け（というか大沢「が」打ち解け、）梶原刑事のいい人感がうまく演出される。そしてこの編では、前作のような不気味さから中盤以降、苦悩する父親の感動パートへと変わる。御法川編では、唯一ほとんど事件に直接絡まないが、特に後半ではそれが逆にスパイスとなっており緊迫した大筋の中で休息のような雰囲気さえするが、こちらも同様になかなか緊迫したシナリオだ。あと、物語の終盤では建野刑事などの脇役も主人公として登場する。
で、酷評のボーナスシナリオ2はというと、相変わらず、残念である。そもそもシナリオとは関係のない点であるが、ボーナスシナリオ2だけはフルボイスであるが、音声とともに文字も表示されるので、音声がわずらわしい。大物声優が出演しているので聞かずに飛ばすのももったいないと感じるのだが、ボイスという点で、やはりチュンソフトとタイプムーンら後追いソフトハウスとでは積み上げてきたものが違うというか、大変酷評であった忌火起草の音声システムが以下に優れているかを見にしみて感じることが出来た。で、シナリオは本編終了後ということもあってか、話の流れが予測できる平凡なストーリーだし、前述の通りテンポも悪いし、ついでに本編の役者と比べてアルファルドの年齢に矛盾が発生するのではないかと思うし。アフターストーリーでもアナザーストーリーでもないし、今まで記してきたようにあらゆる面において本当に必要がなかったと感じる。なぜこの作品が収録されているのか理解できないというか。
もうひとつのボーナスシナリオであるボーナスシナリオ1はかまいたちの夜でおなじみの我孫子武丸先生脚本の作品である。シナリオとしては、そこらへんの携帯小説にでもありそうな話であるが、本編のアナザーストーリーであるという点、また我孫子氏による言い回し、音楽、写真などで非常によい作品となっている。ただしこれ一本ではたいした作品ではない。本編を見た後だからこそ、良い作品だと感じるものである。

既読スキップやタイムチャートで任意に時間移動が出来るのがよい。ノベルゲーの中にはタイムチャートで時間移動できないものもおおいので。さらに、タイムチャート内でのザッピングのしやすさ、や分岐点、JUMPなどが把握しやすい。バッドエンドでは終盤以外ではヒントを与えてくれるのでわりとさくさくと進めるだろう。バッドエンドも、悲惨なもの以外にコミカルなものもあって、憂鬱すぎないのも高評価。

きわめて高いの一言に尽きる。なぜならそもそも物語を読み進めるゲームであるし、前作のように全編を通して陰鬱な雰囲気ではなく、初期段階ではわりと明るく、コメディな感じで、核心に迫るにつれ緊迫した様相を呈してくるが、そこまで読み進める頃には続きが気になって仕様がないという状況になるからだ。前述の通り、バッドエンドが暗いものばかりでなく、終盤まではわりとバッドエンドを回避できるようにできているのも吉。

現在ではそれほど高くない。発売当初では金のしおりにすればインターネットを介して秘密のページにアクセスできたがそのサービスは終了してるためだ。現在では、本編は複雑な分岐があってボリューム満天だが、ボーナスシナリオ1,2はともにシナリオを読み進めるだけのものだからだ。ちなみに、今作にはチュンソフトのサウンドノベルにしては珍しくピンクのしおりがないが、その代わりに実はさらにひとつシナリオがあり、エコ吉編という。実はこれを読むと本編の一部が少し変化するが、それはそれで、こちらの話は3つのシナリオとは違って素っ頓狂なコメディ的なものである。そしてこのエンディングこそが428の真のエンディングとされているのだろうか、メイキング映像が収録されている。本編終了後ではまだ物語につかりこんでいるので早すぎるということで、メイキング映像をここに持ってきたのは秀逸である。全然関係ないが、大沢ひとみと大沢マリアは同一人物（近野成美）が演じているが、まったくの別人に見えるほどよく練られたシナリオであった。そういえばアルファルドなど外国人キャストも日本語がしゃべれるらしく、メイキングではイメージが壊れてしまった（爆）