二条城

かつては城の四隅に存在した隅櫓だが、北側の隅櫓は1788年の大火で消失。現在ではこの東南隅櫓と西南隅櫓が残るのみとなっている。大火より前に天守は落雷により消失していたため、隅櫓は本城の天守の代役とされた。

二条城にはこのほかにも北大手門があるが、東大手門が二条城正門となっている。この城には非常時に天皇を警護する役割もあったため、御所の方向に大手門が二つ用意された。

本願寺と同様に、武家による唐門であるため、豪華絢爛な装飾が施されている。二条城は家光の代に幕府との緊張関係にあった後水尾天皇の行幸を仰ぐために拡張された。この唐門はその行幸にあわせて新築された。

城内の透かし彫りには、表裏で異なる絵柄が堀分けられているなど高度な技法が用いられている。

二条城は徳川の城であるが、そこかしこに天皇家の菊紋が描かれている。これは、1884年に宮内省に所管が移された時に変更された。菊紋の下には同じ大きさの葵紋が残されている。一方で、建物内部には葵紋がそのまま残されている。

唐門の天井装飾。天井も同様に手の込んだ装飾で埋め尽くされている。城内の天井は二の丸御殿も含め、格子状に組まれている。

右の建物が御殿の玄関であり車寄。奥の大きな千鳥破風の屋根の建物は遠侍。遠侍にも菊の紋の装飾が施されている。二条城二の丸御殿は国宝であると同時に、城の御殿が残された唯一のものである。

二の丸御殿の建物には雁行と呼ばれる配置が見られる。空を飛ぶ雁の群れのように建物が斜めに連なっている。奥（左）へ行くほど身分が高く、身分の低いものは近づけなかった。向かって右が遠侍、中央のやや小さめの建物が式台、右の建物は大広間となっている。大広間は、あわせて90畳を越す広さがあり、二の間、一の間と天井が高くなっている。またさらに将軍の頭上が高くなっており、二重折上格天井と呼ばれるこの演出将軍が特別な存在であることを示すものであった。大広間に描かれている松も将軍の絶対的な権力を天下に見せ付けるものであった。将軍の背後にも後光が差すかのごとく松の巨木が描かれ、これも将軍の権威を高める演出のひとつである。二条城二の丸御殿に連なる建築物群は格式の高い順に、白書院、黒書院、大広間、式台、遠侍。

うぐいす張り廊下（床下）。床板の上下動により、写真中央の目かすがいが動き、うぐいすのような音を立てる。何者かの侵入を音で知らせるために作られたとされるが、詳細は現在も謎に包まれている。また、うぐいす張り廊下の技術もロストテクノロジーであるため、損壊すると復元は困難とされる。

二条城には比較的多くの松が植えられている。二の丸御殿の障壁画の題材にも式台の間の「松図」を筆頭に多く採用されている。これは松が常に緑を保つことから、将軍家の永久の繁栄を願ったものとされる。

元の本丸は1788年の大火で全焼、幕末に15代将軍慶喜の住居として再建されたが明治14年に撤去された。現在のものは京都御苑今出川御門内にあった旧桂宮邸の御殿を明治に移築したもの。かつては春秋に特別公開が行われていたが、耐震性に問題があることが判明したため、2009年現在、公開は行われていない。

もとは望楼型の五層の天守が家康によって二の丸北西に立てられていた。家光の代にこの天守が淀城に移築されることとなり、かわりに本丸の南西に伏見城から天守が移築された。この天守台は旧伏見城天守のものである。この天守は層塔型五重五階の天守であったが、1750年に落雷で消失して以降は再建されていない。

二条城の南隣に立地する神泉苑は二条城ではないが、もとは現在の二条城の敷地にも及ぶ大庭園であった。平安京最古の遺跡であるこの庭園は天皇が花見や競馬などを楽しむためのものであった。それを徳川家康が二条城造営に際して大々的にとりこんだ。表向きの名目は神泉苑の豊かな湧き水を城の堀に利用することであった。しかし家康の権威付けのために必要であったのではないかとされる。