概要
琉球王国のグスク及び関連遺産群の一部として登録されている首里城は琉球最大のグスクであり、三山時代の中山王そして統一王朝の国王の居城の遺跡である。旧来琉球諸島の施政を委任してきた中山王府を廃し県を置く、琉球処分が完了した1879年まで、歴代国王の居城として琉球王国の政治が移行文化の中心的役割を果たした。建物は、中国と日本の両国に影響された琉球建築の特質を備えている。第二次世界大戦末期に日本国内で唯一発生した地上戦である沖縄戦では、一般市民を含む20万人が命を落とし、首里城も徹底的に破壊された。現在見られる多くの建物は沖縄が本土復帰して以降に、崩れた古い城壁の上に新たな石が積み上げられ復元された。復元された建造物群と城壁は世界遺産ではなく、戦争で荒廃した首里城跡のみが世界遺産として登録されている。基本情報
遺産種別
文化遺産/琉球王国のグスク及び関連遺産群
登録遺産位置
沖縄県那覇市
北緯26度13分 東経127度43分
北緯26度13分 東経127度43分
登録遺産面積
資産 7.3ha
緩衝地域 136.9ha
緩衝地域 136.9ha
ギャラリー
守礼門
2000円札（D券）にも描かれている守礼門。扁額に書かれた「守禮之邦」は16世紀末の尚永王の時代に掲げられるようになったもので、「礼節を守る国」という意味である。古くは首里門とも呼ばれ、また庶民からはイイノアヤジョウ上の綾門）、上の方にある美しい門と呼んだ。第二次世界大戦で破壊された首里城遺構の中で、唯一本土復帰前に復元された。
歓会門
琉球石灰岩で造られたアーチ門である歓会門は首里城の正門にあたる。城を訪れた人々を歓迎するという意味が込められている。国王をはじめ、グスクの役人、外国の使者などが使用した。アーチ上の石門の上に櫓を載せた形式の門は、日本では見られないが、中国や朝鮮では多く見られる。城壁の曲線は、戦いに際し、門に殺到した敵に対して横矢をかけるためのもの。現在の建物は1974年に復元された。
瑞泉門
歓会門に続く第二の門である瑞泉門はアーチ門の歓会門などと違い、城壁を垂直に切り取った上に櫓を載せた、櫓門形式。この形式の門は日本の城によく見られる。瑞泉とはめでたい泉という意味で、門の前の湧き水に由来している。龍樋とよばれる湧き水は王宮の飲水に用いられたほか、中国の冊封使の滞在中はこの湧き水を那覇の宿舎まで運ばれたという。
漏刻門
瑞泉門を過ぎると姿を表す第三の門は漏刻門。漏刻とは中国語で水時計という意味。この門の上の櫓の中に水時計が設置されていた。身分の高い役人や外交官であっても国王に敬意を評し、ここで駕籠を降りる習わしであった。老朽化のため昭和初期には撤去されていたが、1992年に復元された。
広福門
第四の門である広福門。広福とは「福を行き渡らせる」という意味。向かって左側が士族の財産を巡る争いを調停する役所、右側が神社仏閣等を管理する役所となっていた。現在の建物は1992年の復元。
奉神門
3つの門から成る奉神門。中央の門は国王や冊封使など賓客が使用した。奉神とは「神を敬う」という意味。現在の建物は1992年の復元。
天水甕
奉神門前の天水甕。奉神門前の下之御庭には、少なくとも4個の大きな甕が地中に埋まるように設置されていた。消防用の水をためていたのではないかと推測されている。写真の天水甕は類似する陶器の事例を参考に復元されたもの。
正殿
紫禁城太和殿によく似た姿をしている正殿。中国風の建築ではあるが、唐破風を取り入れるなど日本の影響も見られる。首里城の中心としてふさわしい装飾が施されている。中国の宮殿の様式を踏まえて作られた、正殿正面の広場は御庭と呼ばれ、国王の即位や外国の使節を迎える儀式など、1年を通じて様々な儀式が執り行われた。地面に描かれた紅白のストライプ模様は、儀式の際に人々が並ぶためのものだという。
北殿
正面に正殿を臨むとき、向かって左手に位置するのが北殿。王府の行政施設としての役割と、中国からの使者、冊封使を接待する場所としての役割があった。向かい側の南殿は、首里城の年中行事の儀式を執り行った所で、薩摩の支配下では、薩摩の使者の接待所としても使用された。
遺構
首里城正殿は創健以来、4度の焼失と再建を繰り返している。この石積みは、消失と再建を繰り返した首里城正殿の遺構。現在の首里城正殿は本来の遺構を保護するため、70cmほど嵩上げして建築されている。世界遺産として登録されているのは、この遺構としての石積みの方。
下庫理
正殿1階はシチャグイ（下庫理）と呼ばれ、中央の玉座、ウサスカ（御差床）に国王が執務し、自ら政治を行う場として、また重要な年中行事を執り行う場として使われた。奥には2階へ繋がる階段があり、身分の高いもののみが上ることを許された。なお、3階は彩色の無い屋根裏部屋。
玉座
正殿2階の玉座。2階はウフグーイ（大庫理）とよばれ、日常的には王妃や身分の高い女官たちが使用していた。国家の安泰や、国王親族の繁栄を祈願する儀式などが行われた。祝宴や儀式の行われた玉座の上には、中国皇帝から送られた額が飾られている。「中山世土」とは、琉球が代々中山の治める国であることを中国皇帝によって認められた証。額に描かれた龍は中国皇帝を表し、5つの爪を持つ。一方、その下に描かれた龍は琉球国王を表す竜は4つの爪を持つ。これは琉球王国が中国の冊封体制の下にあったことを示している。
冠
金や珊瑚で装飾された国王の冠のレプリカ。
淑順門
淑順門は、国王とその家族が暮らす御内原への表門。御内原は正殿の裏手にあたる位置に立地する。
久慶門
久慶門は歓会門とほぼ同じ作りの門だが、歓会門が正門であったのに対し久慶門は通用門として用いられた。主に女性が使用したと伝えられる。地形の関係でこの周辺には城内に降った飴が地下水として湧き出てくる。そのため、門の両脇には樋が設置されていた。現在の建物は1983年の復元。
復元工事
首里城の復元工事は2014年現在も続いている（写真は2013年撮影）。ただしこれらは前述のとおり世界遺産ではない。