概要
富岡製糸場と絹産業遺産群の一部として登録されている富岡製糸場は、明治5年に明治政府が設立した官営の器械製糸場である。和洋技術を混交して建てられた木骨レンガ造の繭倉庫や繰糸場などがほぼ完全に残る。富岡製糸場は時代とともにその運営母体を変遷しながら昭和62年まで操業を続け、製糸技術開発の最先端として国内養蚕・製糸業を世界一の水準に牽引した。富岡製糸場は最後の運営母体となった片倉製糸紡績（現・片倉工業）によって操業停止後も、「売らない」「貸さない」「壊さない」の3つの原則のもと2005年まで保全管理された。現在は富岡市に寄贈され富岡市が保全管理を行っている。基本情報
遺産種別
文化遺産/富岡製糸場と絹産業遺産群
登録遺産位置
群馬県富岡市
北緯36度15分 東経138度53分
北緯36度15分 東経138度53分
登録遺産面積
資産 5.5ha
緩衝地域 151.1ha
緩衝地域 151.1ha
ギャラリー
繰糸場
繰糸場は、繭から生糸を取る作業が行われていた場所である。富岡製糸場の建造物は、木骨にフランス式にレンガを積んだ木骨レンガ造とよばれる様式で建てられている。
トラス構造
内部には柱が一本もなく、三角に組んだ梁で屋根を支えるトラス構造となっている。これは従来の日本にはなかった新しい技術であった。
自動繰糸機
現在繰糸場に保存されている繰糸機は富岡製糸紡績によって昭和40年代に設置された自動繰糸機。建物は、電気のない時代に二階の高さまでガラス窓にすることによって太陽の光を取り入れる構造となっている。
フランス式繰糸機
富岡製糸場に当初設置されていたフランス式繰糸機の復元機。繰糸場内には、この繰糸機が300台設置されていた。
ブリュナエンジン
富岡製糸場の操業時に動力として使われた横型単気筒蒸気機関。指導者として雇われたフランス人ポール・ブリュナが同国から輸入したことから「ブリュナエンジン」と呼ばれている。現存する国内最古の蒸気機関。
東繭倉庫
東繭倉庫は富岡製糸場の正面に立地する。1階は事務所、作業場として使われ、2階に乾燥させた繭が貯蔵されていた。
フランドル積み
富岡製糸場の建物に用いられてるフランドル積み（フランス（正確にはフランドル地方）式のレンガの詰み方）とは写真のようにレンガの長手と小口を交互に並べる積み方。
屋号の刻印
富岡製糸場のガラスや窓枠はフランスから輸入されたが、レンガは日本の瓦職人が制作した。そのため、レンガには瓦と同様に職人の屋号が刻印されているものがある。
西繭倉庫
西繭倉庫は東繭倉庫と同様、2階を繭の貯蔵庫として使用された。大きさも東繭倉庫とほぼ同じ。
西繭倉庫の改築
西繭倉庫1階北半分には当初は煉瓦壁が存在しておらず、蒸気エンジンを動かすための石炭置き場として使われた。昭和後期になってから新たに設けられた煉瓦壁はフランドル積みではなく、長手積みとなっており外観で区別することが出来る。
ブリュナ館
指導者として雇われたフランス人ポール・ブリュナが家族とともに暮らしたブリュナ館。富岡製糸場創業当時、人々はポール・ブリュナらフランス人が飲むワインを血と思い込み、富岡製糸場に行くと生き血をとられるというデマが流れたことがある。初代製糸場長の尾高惇忠は自信の娘を工女第1号として入場させ、デマを払拭した。ブリュナ館には地下にワイン倉庫があり、戦中は女工たちの防空壕としても利用された。
煙突
約36mの高さの煙突は現在のもので昭和14年に建設された4代目だが、規模自体は当初と同じ。高い煙突が設けられたのは、燃焼効率を高めるとともに石炭を燃やす際に発生する煤煙対策であった。
診療所
製糸場内には診療所が設けられていた。富岡製糸場は福利厚生が整えられており、同時代の他の工場の模範とされた。ここでは、女工哀史に記されるような女工は存在しなかった。
女工館
この女工館は、日本人工女に器械による糸取りの技術を教えるために雇われたフランス人女性教師の住居として建設された。
検査人館
現在は事務所として使用されているこの建物は検査人館。生糸の検査などを担当したフランス人男性技術者の住居として建設された。2階には貴賓室があり、ほぼ当時の状態で残されている。